だから言わんこっちゃない「ふるさと納税」見直しについて

ふるさと納税の問題について

前々から懸念していましたが、いよいよ本格的に「ふるさと納税」に対して見直しが入りそうです。総務省からの通達は少し前に出ていたのですが、相変わらず守らない自治体もあるため、違反する自治体は税優遇の控除対象から外すというのです。

正直、どっちもどっちでどうなのよ?という気がします。
見直さない自治体は、この通達を守って返礼品を変更した自治体がバカを見ているので変更しないのでしょうが、最終的には自分の首を自分で絞めていると言えます。
総務省も酷くて、元々の制度設計に問題があるのは明らかなのに、それについて抜本的な変更なしに今回の話です。そして控除対象から外れると一時的に迷惑をこうむるのは寄附者です。

ふるさと納税とは

「ふるさと納税」の詳細はここで説明しませんが、ザックリと概要をおさらいします。

  • 好きな自治体にふるさと納税(実際は寄附)(例えば10万)
    (効率的な限度額は年収によります)
  • 寄附した自治体から30%相当の返礼品をもらえる
    (例えば3万円相当、自治体によって異なる)
  • 次年度、10万円から2000円を引いた金額分、住民税が安くなる(※1)
  • 実質 2000円の負担で3万円相当の品物をもらえる

ということになります。
※1 源泉徴収者は申請書を寄附時に提出することで確定申告不要

住民税の控除額に限度があるので、実質 2000円で減税を受けられる上限は年収が高くなるほど増えます。よって、高所得者(高額納税者)ほど恩恵が大きくなります。

ふるさと納税によるメリットは、

  • 実質減税になる
  • 地方特産品の会社が儲かり、地域経済が活性化する
  • 地方への注目が高まり、観光需要などに繋がる

ということで、利用者、自治体ともにメリットがある。

通常よく言われているのはここまでの内容と思います。
正直なところ、所得がある人はやらないともったいない制度です。

これだけ書くと良いことだらけなんで、どんどん活用すればいいやんとなるわけです。

 

ふるさと納税の問題点

良いことだらけに見えますが、実際はデメリットもあります。

  • 住んでいる自治体の税収が減る
  • 特産品選別が癒着の温床になる

恩恵に対して、デメリットは利用者に直接的に降りかからないこともあり、あまり語られないし、注目もされません。

ただ今回通達が出て、さらに罰則を付けようというのは、いよいよデメリットを放置できなくなったということです。

特に問題なのは、寄附した人が住んでいる自治体の減収です。
上記例でいくと、寄附者が住んでいる自治体は98000円の税収減となります。

また、寄附をもらった自治体も実際に使えるのは、10万ー3万ー経費となるため、社会全体の税収は減ります。この減収分を得しているのが、特産品業者との寄付者になります。

特産品が少ない都市部の自治体は、どうしても寄附額よりも税収減の方が大きくなりやすいため、最終的には住民サービスの低下につながります。

社会全体で見ても税収減となるため、実際はマイナスの影響を受けている人が多いのです。

それを避けるためには寄付を集めるしかなく、その結果、返礼品競争が起こります。税収減を避けるためには、余所の自治体が困ろうと寄付を集めるように働きかけるしかないのです。

制度の仕組み上、返礼品競争になって当たり前なのです。

その結果、一番被害を受けていると考えられるのは

  • 都市部に住む人
  • 寄附の優遇が少ない(無い)低額所得者
  • ふるさと納税を利用していない人

と考えられます。

デメリットの直接的な影響を感じにくいことや、デメリットを受けている人の社会的な影響力が小さい、そもそも不利益を受けている認識すらない、ということから問題が大きくなりにくかったと考えられます。

今後のふるさと納税

一応通達が出て、ほぼ全ての自治体で返礼品を見直すと思いますが、実際は3割でも高過ぎると思います。3割でも利用すればお得な制度であることに変わりは無いので、さらに利用者が増えて、都市部の自治体が税収減に追い込まれるはずです。

通達に反対の姿勢を示している泉佐野市などは、自分のところさえよければ余所は知らないという姿勢とも取れ、もっと批判されてもいいと思うのですが、それほど批判されてないようです。デメリットが直接的な影響を与えにくいということがあると思います。

今となっては、地方業者の中には「ふるさと納税」の返礼品で事業が救われているところも多いと思うので、今さら制度を一気に縮小すると、そんな業者がバタバタと倒れかねません。

制度自体は、地方の特産品に注目が集まったという点では悪い制度では無いと思います。
実際、私もこんなところにこんな特産品があったのかと初めて知ったものも多かったです。寄附した自治体への愛着も沸くので、機会があれば行ってみようという気にもなります。

ただ、今のままではあまりにもバランスを欠いています。
今後も、どのあたりに収束させるかのバランスを取りながら制度見直しが続くと思います。

  • お得な間は利用しよう
    (住んでいる自治体への納税が減る認識を持って)
  • 不利益となっている人は声を上げよう

 

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